ご自宅に伺って年忌法要
ご自宅に伺って七回忌の法要をお勤めいたしました。
この日は秋晴れで、バイクで向かったのですが、
法衣を通り抜ける風が心地よく感じました。
故人は合同墓に納骨されている方なので、
ご家族にお寺で行われる合同年忌法要のお知らせをお送りしたのですが、
お母さんが高齢で、お寺に参拝することが難しいという事情でした。
参加者はお母さんと娘さんの二人です。
30分ほどの読経のあと、
娘さんに、お父さんのお話を聞かせていただきました。
父は、両親から受け継いだ米屋を営んでいました。
酒もタバコもやらない人で、遊ぶことも少なく、祖母の言いつけをきちんと守って、家族のために一生懸命働いてくれました。
「死ぬまで店を続けたい」と言っていましたが、
年をとり、身体が思うように動かなくなったのでお店を閉めました。
若い頃の父は厳しい人でしたが、
晩年は不思議と優しくなりました。
家の前の小さな花壇に腰を掛け、
毎日通行人に向かって「おはよう。」とか「いってらっしゃい。」などと声をかけていました。
知らない通行人ですし、仕事に行くのか、買い物に行くのかも全然わからない人にです。
声をかけられた人は驚いていたと思います。
父が亡くなってまもなく、
時おり人が尋ねて来るようになりました。
「ここで毎日声をかけてくれていた人がいたのですが、最近姿を見ません。お元気なのですか?」
と心配して尋ねてきてくださるのです。
亡くなったことを伝えると、みな残念がってくださり、
毎日声をかけてくださったことが嬉しかった、
などと教えてくださるのです。
亡くなってからあっという間に七回忌をむかえました。
優しい笑顔が思い出されます。
私もあんなふうに年を取れたらなぁと思っています。